朝活トークショー 第1回(2020.12.13)

「甘酒と免疫力アップ」

「甘酒と免疫力アップ」
朝活トークショー 第1回(2020.12.13)

MUROが、甘酒の魅力をもっと広く伝えたいと企画した朝活トークショー。第1回は、2020年12月13日(日)に行われました。
今回は、冬場の寒い時期に風邪やインフルエンザなどを予防という観点から「甘酒と免疫力免疫力アップ」というテーマで行いました。講師は甘酒探究家で世界中の甘酒を研究する藤井寛さんと、フードコーディネーターの音仲紗良さんです。

提供に関するお礼
今回のイベントに際し、長野県伊那市に蔵を構える『仙醸』様より甘酒をご提供いただきました。

講師紹介

藤井寛さん

甘酒探求家、発酵牧場株式会社代表。甘酒造り歴24年、500本ほどの市販甘酒を飲んでレビューし、「あまざけ.com」で情報を発信。甘酒の固造りを応用して作った発酵あんこのレシピ本『発酵あんこのおやつ』を出版し、発酵あんこ研究家としても活躍。
http://あまざけ.com/

音仲紗良さん

フードコーディネーター、株式会社ぽかぽかてーぶる代表。フードコーディネーター&スタイリスト/ライターとしてメディアを中心に活動。神宮外苑で「バインミートーキョー」のオーナーとしても活躍する。
https://pocapocatable.com/

ごあいさつ

トークショーは、仙醸さんの甘酒と、バインミートーキョーさんのグルテンフリーのバインミーをいただきながら始まりました。まずは登壇いただくおふたりのご挨拶です。

藤井さん
甘酒探究家として、日本全国の甘酒、何種類あるのか、どこにどんな甘酒があるのかなどを「あまざけ.com」というサイトを作ってそこにあらゆる情報を載せています。
もともと東京農業大学で発酵食品を勉強していたのですが、2011年あたりから「いろいろな甘酒が増えてきて、今まで自分が大学で醸造を研究してきたなかで、いろいろな醸造家さんたちが、どんな甘酒を作っているのか調べてみよう」というのがきっかけでした。
今、コロナ禍のなかで病気にならないために免疫力を上げていくのはどうしたらいいのだろう、と言われています。そこで見直されているのが、甘酒やみそ、しょうゆなどの発酵食品です。そうした発酵食品がなぜ体にいいのか、免疫に効果的なのか、ということを甘酒を中心にしてお話したいと思います。
音仲さん
わたしは外苑前で「バインミートーキョー」というお店もやっていて、本日おめしあがりいただいているバインミーは、グルテンフリーの米粉100%で作っています。
今回なぜこれを出しているかというと、挟まれているレバーパテに甘酒を使っているからです。ふつうレバーパテにはラードや乳脂肪などを使っているのですが、その代わりに米麹甘酒とカシューナッツを使って自然な甘みを出しています。そういうことで、今日はこのバインミーをモーニングとして出させていただきました。

以下、音仲さんと藤井さんによってワークショップが進行しましたので、その内容をご紹介します。

甘酒はいつごろからあった?

甘酒が江戸時代に飲まれていることはよく知られていて、甘酒売りが江戸の街を売り歩いていたという光景は有名です。では、甘酒がいつからあったのかというと、平安時代や奈良時代といった1000年以上前から甘酒のルーツになるものがありました。
その頃は米と米麹とお酒で仕込んだものだったのですが、それが江戸時代に入るあたりで今の甘酒に近いものに変わっていきました。アルコールで仕込んでいたものを水で仕込むようになっていきました。甘酒に酒という字が入っているのは、もともとはお酒だったということに由来します。

かつては「醴酒」と書いて「れいしゅ」と読んだり、これで「あまざけ」と読んだりしました。これは昔の貴族が飲むような高級なお酒であったり、八百万(やおろず)の神に今年の収穫を感謝するときに作ってお供えしていたものが甘酒のルーツといわれてます。
その後、貴族のお酒から、庶民の飲み物に変わっていくのですが、お酒で仕込むより水で仕込んだほうがコストがかかりません。江戸時代のレシピ本を見ると、お酒で仕込むものと水で仕込むものがあって、最終的には水で仕込むものが多くなっていきます。そのようにしていくうちに甘酒を売り歩く人が増えてきた、という背景があります。

甘酒の種類について

みなさんが甘酒って聞くとお酒のイメージがあるのは、酒粕で作られた神社などで配られていたものをイメージされていることが多いです。でも酒粕のお酒が普及してきたのは1950年くらいからで、酒粕の甘酒の歴史は浅いのです。
甘酒は米麹の甘酒と、酒粕の甘酒に分けられるのですが、米麹甘酒は「米+麹の甘酒」、酒粕甘酒は「酒粕+砂糖の甘酒」です。

甘酒の種類

■米麹の甘酒:米+麹
■酒粕の甘酒:酒粕+砂糖

これは日本酒の作り方を考えるとわかりやすくて、日本酒は米のデンプンを麹菌で分解することで甘い液体を作って、そこに酵母が入ることで甘い液体を食べてアルコールが作られて日本酒ができます。
米麹の甘酒は、麹でお米が甘くなった状態です。酒粕の甘酒は、酵母に食べさせたあとにできた日本酒の絞りかすです。それをお湯に溶かして甘みをつけるために砂糖を入れています。 酒粕をお湯に溶かして砂糖を加えるだけですから、簡単に作れて、たくさんの人に配るのに都合がいいんです。なので神社などでの配布によく使われていました。

つぎに米麹の甘酒の種類を説明します。基本の麹に、米を加えるか、麹オンリーかで種類が分かれます。さらに水が多いか少ないかでも分かれます。 米と米麹の甘酒は、一般に甘酒として売られているものです。米麹だけの甘酒は、「麹だけの甘酒」あるいは「早作りの甘酒」という名前で呼ばれています。

水の量による種類

■水分が少ないもの:かたづくり
■水分が多いもの:うすづくり
 (分岐点は炭水化物量が32%)

水が多いか少ないかでいうと、かたづくりの甘酒と呼ばれるものが水が少ないものになります。水の多いものがうすづくり甘酒と呼ばれます。
水の多い少ないは、炭水化物量が32%くらいが分岐点になりますね。かたづくりの甘酒は、どろどろで甘いので、基本的には水などで割って薄めて飲む甘酒になります。

甘酒の栄養と機能

甘酒に限らず食品には、食べたときに体のエネルギーになったり、体を作る素材になるものが「栄養」になります。
それ以外にも食感や匂いなどは「嗜好」と言います。それ以外にも栄養にはならないのだけど、体にプラスの働きをするもの「機能」といいます

食品の要素

■栄養
■嗜好
■機能

栄養というのは体を動かしたり、ないと生きていくことができないもので、タンパク質や脂質などを指します。ビタミン群などは、生きていくうえで、栄養や体を作ったりすることを促進する働きをします。
機能は栄養にはならないけど、人間にとってプラスの働きをするもの。たとえば薬は、栄養にはならないけど、風邪を治したり、消化を促進してくれたりする機能を持っています。それに近いかもしれません。

お米だけの状態と、甘酒の違いは、麹による発酵という工程が入っているので、コウジカビっていう生き物がお米のデンプンを食べて物質を作り出します。その物質が人間に対してプラスに働くんです。ビタミン群は発酵すると増えて、タンパク質や炭水化物、脂質などからエネルギーを作ったり、体の素材を作る働きを助けます。

発酵食品の利点

例えば炭水化物には、糖質と食物繊維という分け方があります。糖質は人が食べたときに栄養にできるもので、食物繊維は人間が持っている消化酵素では栄養にできないものです。 人間の消化酵素が分解できないものを、腸内の細菌が食べて物質を出します。細菌が出した物質が、腸内の免疫系を刺激したり、血圧を下げるような働きをしたり、脂肪の燃焼を促進するような働きをしたりします。

炭水化物やタンパク質などの栄養素は、消化酵素で分解して小さくしてから、腸から取り込みます。それが血管を通っていろいろな細胞に取り込んで栄養にしています。発酵食品というのは、人間が消化酵素でバラバラに分解するという働きを、微生物の酵素がすましている食品なんです。ですから発酵食品は栄養の吸収性が高いのです。
甘酒は、お米の持っている栄養素を麹菌によって、デンプンをブドウ糖に、タンパク質をアミノ酸にまで分解しています。また麹菌が残していったビタミンB群や作り出した機能性物質が増えているというそんな食品なのです。

甘酒の免疫をアップさせる効果

人間の腸管には、腸管免疫細胞がたくさん集まっています。そこで腸内細菌が出した物質や体に入ってくる物質を監視したり、入ってきた物質から刺激を受けて、免疫を活性化するんです。
免疫細胞は、抗体を作ったり、菌を叩く働きをしています。免疫細胞も人間の細胞ですから、ブドウ糖やアミノ酸、ビタミンB群などが入ってくれば、それがエネルギーになります。つまり甘酒をとることによって、人間が持っている免疫力をあげられる、ということにつながります。

今の時期、風邪などの対策として甘酒が免疫力が高めるのに効果的といわれる理由です。

受講者からの質問と答え

甘酒を飲むと、ビタミンやアミノ酸があがることはわかりましたが、具体的にどういうもので有効性を示しているものがあるのかが知りたいです。
ビタミンだと血液を作る働きをする葉酸などが増えています。貧血になりやすい人などには甘酒をとるといいと言われていますね。
またアルコールも含んでいないので、妊娠中の方にもいいですよね。妊娠のときは子どもにもエネルギーを送らなくてはならないので、エネルギーを消化しやすいものをとるのは大事なことですね。
麹菌っていうのは体内に入ってどれくらい生き続けて効果があるもの?
実は甘酒にした段階で麹菌は死んでいるんです。甘酒を作るときに55℃から60℃くらいに温度を上げるんです。それって牛乳の低温殺菌の温度なんですね、63℃30分という殺菌方法があります。

それだとビタミンやアミノ酸も壊れませんか? とよくいわれますが、水溶性のビタミンはそんなにすぐに壊れないんです。アミノ酸はタンパク質が分解されるとアミノ酸になるものなのでアミノ酸も壊れないです。野菜などを加熱調理しても栄養素は8割くらいは残った状態ですね。
麹菌が体内に入ったときには麹菌は死んでいますが、人間の体に入ったときには、人の栄養素になったり、腸内細菌のえさになったりします。だから腸内でえさになるから、むしろ積極的にとることが必要です。
麹菌の種類による違いで効果も変わりますか?
乳酸菌も種類によって、脂肪の吸収を抑えるとか、花粉症に効くとか、免疫を刺激して風邪を引きにくいなどがありますよね。麹菌も用途によって使う菌が違っていたりします。みそを作る麹、しょうゆを作る麹など、いろいろ違いがあります。

たとえば黄麹、黒麹、白麹の種類の違いですが、カビって胞子を出すときに色がでるんです。麹の違いは味に違いが生まれます。
黄麹はみそやしょうゆなどを作るときにも使うんですが、あたりさわりのない味です。
でも黒麹は沖縄の泡盛を作るときに使うんですが、沖縄の方は気温が高いのでお酒を作るときに腐りやすいんです。黒麹はレモンなどに入っているクエン酸をたくさん作る麹で、酸味が強く腐りにくくなります。ただ黒麹で焼酎を作ると麹室が汚れるんです。
白麹は、黒麹と一緒でクエン酸をたくさん作るんですが、胞子に色がつかないのです。鹿児島の河内さんという糀屋さんが黒麹をもとにして開発したんです。
また紅麹というのもありますが、これは麹菌の仲間ではないんです。麹菌はアスペルギルスなんとか、っていう名前がつくんですが、これはモナスカス属で、中国の赤豆腐や沖縄の豆腐ようなどに使われているものです。

麹は酵素を作ってくれれて機能すればいいと考えられていたので、麹による栄養の違いなどはまだ産業的にはあまり研究されていません。これは今後もっと研究が進められていくところだと思います。
人によって合う合わないっていうのはありますか?
ありますね、味もおいしさの好みがありますし。人によって体質などの細かいところの違いはあります。ただ、麹菌がもつ作用で、腸内環境がよくなるとか、肌の調子がよくなるといった効果はある程度研究して結果が出ています。
ですので個人差はあるにしろ、麹菌の働きについては実証されています。
いろいろな甘酒をとることによって、腸内細菌の多様性も増えれば効果があがることはありますか?
ありますね。菌のえさになるものは人間の食べ物によってくるので、たえば肉ばかり食べている人、野菜ばかりの人、炭水化物ばかりの人などでは腸内細菌のバランスも違ってきます。いろんな菌をとることで菌のバランスも変わってきますから。
ただ発酵食品なので薬と違うので、即効性があるわけでなく、飲み続けることが大切だと思います。
甘酒を取るタイミングってどんなときがいいですか?
甘酒をとると血糖値が上がります。血糖値があがると朝になった、というふうに体内時計にシグナルを送るんです。たとえば朝食事をとらないとなんか調子がでないっていう人がいますが、それも体内時計がまだ目覚めていないんですね。なので、甘酒をとることでエネルギーを取得できると同時に、体内時計に朝が来たことを知らせる働きもあります。
ですから目覚めの一杯はいいですね。飲み方も好き好きでよくて、寒いから温めて飲むとか、冷たいままで飲むとか、そのへんはあまり細かいことを気にしないで楽しんでいいと思います。いちばんは、おいしく続けて飲むことが大切ですね。

終わりに

今回は、甘酒の全般的な知識を藤井さんに解説してもらいました。
参加された方も積極的に質問し、予定時間を過ぎるなど、みなさんの甘酒への関心の高さも感じられました。のレンMUROでは、こうしたワークショップを今後も定期的に行ってまいります。